短編集 赤い糸

 

短編集 赤い糸

出久根達郎(三月書房、2484円)

江戸言葉だけの11編が続いている。茨城県生まれの著者が今は完全に江戸言葉の研究家だ。自称江戸っ子たるもの、進んで本書を求むべし、と思う。▽お湿りなきや▽おんな飛脚人(書き下ろし)▽江戸ことば一心太助(同)▽奉加帳▽とっかえこ▽飛い騨ん爺い▽送り火ちらほら▽四月馬鹿▽川越し▽島田―東海道の人の道▽赤い糸――。芝居に出てくるいなせな切られ与三の装画2点も著者の作と知って頭の下がる思い(装幀吉田咲)。

<おんな飛脚人>と<江戸ことば一心太助>(歯切れよく、テンポよく)と読み続けて、ふと美空ひばりの?オーイ車屋さんを幻想した。出久根さんの名調子である。以上の人情ばなし、何かの式とか会の引き出物や記念品に使えばポケットサイズだけに喜ばれること必定。(A6変形本)(M)

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