やりきる

   2014/04/12

やりきる

講道館長、全日本柔道連盟会長 上村春樹

帯に「運動オンチの肥満児」は、いかにしてオリンピック金メダリストになったのか?―とある。カバーの袖には<つねに「一本」を取るために―やりきる>と表題の意味が示されている。著者は熊本県宇城市生まれ。幼稚園と小学校では悪ガキで通った。小5で中学柔道部に入部させられ、小6で初優勝。これまでの問題児が全校朝礼で表彰され、人生が一変する。

八代東高―明大と進学するが、東京学生体重別選手権大会で無名の相手に絞め技で一本負け。そこで恩師となる故神永昭夫9段から「人の2倍、3倍やれば」と天の声を授かる。

旭化成を経て2009(平成21)年4月、講道館の第5代館長に就任した。嘉納治五郎師範から4代目まで、ずっと嘉納家の縁者によって引き継がれてきた講道館に初めて他人の血が入った。見込んだ4代目嘉納行光氏(現名誉館長)が偉い。上村春樹初の自伝書一読を勧めたい。母校OBも限りなく世話になっている人だ。

(ユナイテッド・ブックス発行、1,600円+税)

満洲 マンチュリアの起源・植民・覇権

小峰和夫(1,313円、講談社学術文庫)

学歴貴族の栄光と挫折

竹内洋(1,365円、同)

塩田剛三の世界

塩田剛三・塩田泰久共著(A5判、1,890円、海鳴社=西神田)

著者剛三(故人)は拓大37期、合気道養神館長

ドナウの川風 日欧に虹を架けた男―山本崇夫回想集

刊行委員会は群馬大学教育学部柔道部OBたち。新井禮次郎(レスリング衣)桜井弘(柔道衣)山本(相撲)三羽ガラスの写真(P186)が懐かしい。1964東京オリンピックの時、山本は日本レスリング協会の支援役員を務めた。引っぱり込んだのは群馬県レスリング協会長の正田文男(美智子皇后の縁者、子息は拓大72期)と宇佐美茂(47期、元レスリング部監督)の両氏であろう。山本はハンガリー担当を願い出て、ヘビー級王者コズマと肝胆相照らす仲となる。以後ハンガリーとの友情が続く。惜しくも2009(平成21)年7月、不帰の客となった。