アマゾン川の畔~アマゾナス伝説に出会う~
井上富美子(70期)
アマゾンに旅行しました。世界最大の熱帯雨林地帯である。あの様子を一言で表すことは、とても難しい。
アマゾン川から日が昇り、アマゾン川に日が沈む。夜には大きな月が輝き、満天の星々と南十字星が輝く。大地には果てしないジャングルと果てしない水面。そして逞しく生きる人々。
8月14日21時50分、成田空港を出発。細田訓子さん(67期)と井上富美子(70期)がアマゾンに向け旅立ちました。長年の思いがやっと叶った瞬間です。アマゾナス州の州都マナウスへと向かいました。40時間後の到着でした。
マナウス
マナウスはサンパウロから北へ4,000㎞の熱帯にあります。南緯2度。フリーポートのため空港も国際空港です。現地時間23時30分到着。日本との時差は13時間。8月16日いよいよアマゾン探検隊の開始です。朝食を取っていると、小柄な日本人女性が現れました。丸山ツネ先輩です。昨年の欧州大会パリでの約束とは言え、早速の出迎えに感謝・感動です。
丸山先輩は以前アマゾン川上流の島に住んでいましたが、ご主人亡き後、今はマナウスの市街に住んでいます。お元気でした。
何しろか弱い女性2人のアマゾン探検隊は、とても心細いです。日本から現地ツアーのガイドさんを手配しておきました。何とガイドの大塚さんと丸山先輩はお知り合いでもありました。大変幸運でした。
8月は乾季、この日の気温は37℃湿度92%、晴天でした。驚くことに丸山先輩は、日よけの帽子も傘もなく、涼しい顔でご一緒して下さいました。私たちは帽子、アームカバー、フェイスカバー、防虫スプレーと重装備でした。一日中ご一緒して戴いて、マナウスを案内して貰いました。
17日からはジャングル探検です。ピラニア釣り(釣ったピラニアは、唐揚げにして食べ美味しかったです)、ピンクイルカ遊び、ワニ観察、ジャングルハイキングとガイドさんと一緒に楽しみました。アマゾン川クルーズでネグロ川との合流地点へ行き、ここのアマゾンの川幅10㎞。マナウスでは食事に必ずと言って良いくらい、ピラルクと言う巨大魚の料理が出ました。美味しく頂きました。
ベレン アマゾン支部
19日は丸山先輩のマナウスからベレンに移動します。
ベレン空港着18時。空港には御守先輩夫妻が待っていてくれました。御守邸に滞在させて戴き、何もかもお世話になりました。しつこいようですが、か弱い女性の2人旅です。
ベレンと言えば、カランゲージョ(泥ガニ)、歴史を今に伝えるカステロ要塞、ペロペーゾ市場、エスタソン・ドス・ドッカス。ベレンのアマゾン川幅は約300㎞。
御守和夫先輩(67期)はアマゾン支部の支部長です。学友は全部で6名いるそうです。アマゾン支部だけで、日本全土の6倍の広さ。その広大さに気が遠くなる思いです。
エスタソン・ドス・ドッカスでは、リオオリンピックのサッカー決勝戦のパブリックビューイングをやっていました。ネイマールJr.のPKに大騒ぎでした。
アマゾン支部総会
20日昼に御守先輩の経営する「IZUMO」へ行きました。何とアマゾン支部が集まっていました。
黒田真琴さん(63期)と尾崎先輩(64期)です。御守支部長と御守夫人幸子さん、細田訓子さんと井上富美子と6名の支部総会でした。皆さんの近況などを伺いました。懐かしく、楽しく素敵な時間でした。
トメアス 南部先輩の農園を訪ねて
トメアスはベレンから南東へ約200㎞。ブラジリア街道を南下します。とは言え、その道はベレンからすぐ農園と原生林のジャングルが続く、果てしない荒野でした。行けども行けどもジャングル農園、またまたジャングル農園の連続です。途中トメアス川を渡りましたが、橋はなく、渡し船に車ごと乗って渡りました。乾季ですが、川の水量は多く、どちらに向かって流れているのかわかりませんでした。
道路は至る所ロンバーダという車止めがあり、うっかりすると乗り上げて車の天井に頭をぶつけます。人家付近は頻繁にロンバーダがあり、ドライバーは本当に油断できません。
トメアスの南部農園に近づいて、路をそれました。谷川(と言ってもジャングル)の下の水が透けて見える橋をわたり、ちょっとした広場に到着しました。墓地でした。元アマゾン支部長だった
南部先輩のお墓があります。日本から持って行った線香を灯し、改めてお参り致しました。南部先輩はクリスチャンでした。大きな木の十字架が立っています。質素ですが堂々としていて、南部先輩の様子が忍ばれました。「南部先輩、やっと先輩の農園に来られましたよ。どうかいつまでも残された奥様や後輩達を見守って下さい。安らかにお休み下さい。」
南部先輩のお墓から30分ほどで農場に到着しました。5時間を超えるドライブでした。
南部農園は熱帯性の作物が沢山作られていました。果物はバナナ、ドラゴンフルーツ、ミカン、マンゴー、パパイヤなどはわかりますが、その他に名前の知らない実が沢山なっています。アサイーがびっしり実をつけて天空に聳えていました。カカオが木の幹にゴロゴロなっています。2㎞四方ぐらいの外側は、ジャングルです。ジャガーに出くわした話を聞きました。鹿も時々出没するそうです。
南部先輩亡き後、夫人の和枝さんが一人で農園を守っています。「近所の農園の皆さんと仲良く暮らしているのよ。」と微笑んでいました。しかしどちらを見ても近所のお家は見えません。2人のお子様は、立派に成人し、アメリカと日本で生活しているそうです。
和枝夫人にお話しを伺いました。トメアスに来て53年目になります。子どもの学校は、5才の時からベレンの全寮生の学校へ行ったそうです。長男はアメリカで牧師に、長女は医学部を出て日本で働いています。
南部ご夫妻は、拓大100周年の時、拓大を訪れています。夫人の和枝さんにお話しを伺いました。トメアスに来て53年になるそうです。千葉県出身で美しい日本語を話されます。背筋をまっすぐに伸ばし、少しブラジル訛りが入っていますがゆっくりと静かに話される姿に見とれてしまいました。屋根の内側にタランチュラが営巣していました。それも何匹も。「タランチュラは人に悪さをしないから、駆除はしないのよ」と言ってました。夕方には家の周りを、コウモリが飛び交い、鳥の鳴き声と農園に吹く風の音、まさにトメアスの自然の中に生活していました。
南部夫人手作りの料理は、海苔巻き・おいなりさん・竹の子と若芽の煮物・ひじき料理・手作り豆腐の冷や奴と目の眩むような日本料理でした。もちろん珍しいフルーツや薫り高い珈琲もあります。
胃袋が10個あれば良いのにと思いました。不思議な事に夜は、時差ぼけもなくぐっすり眠りました。空気が高い湿度と相まってとても濃く感じました。
アマゾネス伝説
マナウスで、丸山先輩からアマゾネス伝説のお話しを伺いました。
ここアマゾン川岸では、生まれてくる子どもの80%近くが女子だそうです。ちなみに、大塚ガイドさんは女3名、丸山先輩も女が2名のお子さんがいます。男子は生まれても長生きできないことが多く、女性は大変逞しく成長するそうです。
今回であった拓大関係者の女性も、全て素晴らしくしなやかで強く、しかも気高く生きている印象を強く受けました。丸山ツネ先輩、御守夫人の幸子さん、南部農園を一人で守っている南部和枝さん、この強さはどこから来るのでしょう。ジャングルの野生の猛獣や昆虫や蛇などより、怖い物がたくさんあることも知りました。皆さんどうかお元気で、またお会いしたいです。
御守支部長様お世話になりました。どうかいつまでもお元気でお過ごし下さい。
南部邸に、拓殖大学創立100周年記念式典の記念品が大切に飾ってありました。
今でもマナウス・ベレン・トメアスでの様々な情景や一瞬一瞬が走馬燈のように脳裏を横切ります。皆さんお世話になりました。ありがとうございました。