伊那の放浪俳人井月現る

2015/02/25

今泉恂之介

同人社(1,600円＋税)

表紙は映画「ほかいびと伊那の井月」(北村皆雄監督)から。中央アルプス＝木曽山脈を背景に。口絵には井月(せいげつ)と山頭火の句碑が建つ。どちらも放浪の俳諧師だ。変人といっていい。

著者は変人ではない。堅物を絵にかいたような珍しい人物だ。2011年には「子規は何を葬ったのか―空白の俳句史百年」(新潮選書)を世に問うている。上智大独文科時代は柔道部主将、4段。日経新聞記者時代はレスリング、柔道に名多筆を振るった。

ちなみに井月は1822(文政5)長岡藩武士の子として生まれた。5年後、一茶が死んでいる。子規の誕生は1867(慶應3)で、このとき井月46歳。同年大政奉還という時代を生きた。まさにＮＨＫ大河ドラマ「花燃ゆ」が背景にあった。(Ｍ)