NHK大河ドラマ・ガイド いだてん 完結編

 

表紙

(NHK出版、1,100円+税)

宮藤官九郎作・NHKドラマ製作班による明治―大正―昭和―平成―令和とつながる日本のオリンピック人物史が一目でわかる完結編(NHK出版)が出て、9月末に書店をにぎわせた。前回までに何度も登場した永田秀次郎東京市長(都知事・拓大4代学長)が1940(昭和15)年アジア初のオリンピック東京大会招致の第一発案者だった。講道館長・東京高等師範学校長の嘉納治五郎師範と拓大の永田は、大塚という土地的にも、教育界のトップリーダーの面でも、そしてオリンピック招致のことでも固い友情をつないだ。

完結編の主役は日本水泳連盟の田畑政治(朝日新聞政治部記者)だが、始めから終わりまで実際の人物にそっくりそのまま阿部サダヲが力演する。本稿筆者も日刊スポーツ記者時代から田畑を知る現場の残り少ない1人だが、阿部は田畑そっくりの演技で我々を唸らせる。ピカイチの役者だ。

1964東京オリンピックの2年前、インドネシアのジャカルタで開催されたアジア大会で日本は立派に役目を果たした。にもかかわらず政治家によって田畑はオリンピック実行部隊から外される。その前年、続けてジャカルタで実行された世界GANEFO(当時IOC脱退の中国が黒幕)にからむ裏面史では、拓大先輩の柳川宗成(専門部10期、陸軍中野学校2期将校)と田畑の密会2度を工作したのも筆者だった。田畑がインドネシアを嫌いになるわけはない。

そのわけは戦時中の朝日がジャカルタに支局を置き、宣伝活動に全力を注いだ事実。東京都知事の東龍太郎(スポーツ医学)までインドネシアびいき。アジア大会とGANEFOを通じ、スカルノ大統領に「ぜひ東京オリンピックへ」を選手団派遣を要請した単独記者会見までからむ拓大インドネシア語の戦略など、日イ協力は今も続く。(M)

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