拓殖大学百年史 昭和前編

   2014/03/27

拓殖大学百年史 昭和前編

5月29日、「昭和前編」が文京A館3階百年史編纂室に運び込まれた。これまでの「明治編」(269ページ)「大正編」(401ページ)と比べると「昭和前編」(819ページ)は約1、2㌔と重く、すごいボリューム感に溢れている。無理もない。本学創立の明治は11年間、大正は13年間、昭和前史は”旋風20年”と言われたように、20年間分あるので、そのぶん内容も濃くなった。

この調子でいくと年末に刊行予定の「昭和後編・平成編」は66年間分あるのだからどういうことになるのか?数年先には以上4部作の合本も計画されているのだが…。

さて「昭和前編」は<発刊の言葉―国運の中の拓殖大学>で渡辺利夫学長が、いみじくも説いている。「第二次大戦での敗北にいたる昭和前期は、日本の近現代史の中でも一段と複雑かつ不穏な時代(中略)」「その中で本学の学生と卒業生たちがいかにしてその生を全うしたのか、その息苦しくも激しく輝いた時代の記録が本書である。生きた歴史とはかくあるべきものかとさえ、私には思われる」。

本書の内容目次は別掲の通りである。が、通読して、この大記録は見事な読み物となっている。本学出身者が想を練り、筆を執ったものではないのに、それ以上に実に見事に拓大人と拓大精神が描かれている。(一部、第五章は卒業生が関与した)

<編集後記>では福田勝幸百年史編纂室長(現大学理事長)が「本百年史のめざす『人物主体』の編集方針を踏まえて」と書いたように、海外雄飛の人材、戦没学徒の物語は、映画を見るように活写されている。同室長はまた「昭和前編は亡くなった私達拓大の先人・先輩の霊を鎮魂する思いで編集したものである」と回想している。拓大レクイエムということである。

顧みて本学は常に国策の先端を切ってきた。狭い国土に過剰人口、この問題を抱えては平和的な海外進出しか日本の方策はなかった―。

(限定2千部、八王子・文京各購買会取り扱い=1部2,500円、送料450円)

通史「昭和前編」主要目次

序章 昭和前期の世界情勢と日本

第1節 ワシントン体制

第2節 満州事変

第3節 深まる大陸関与

第4節 第二次世界大戦へ

第1章 財団法人拓殖大学

第1節 東洋協会大学から拓殖大学へ―学園の基盤構築

第2節 拓殖大学専門部の設置

第3節 三代学長後藤新平の遺したもの

第4節 四代学長永田秀次郎―文部省思想管理体制下の大学経営

第5節 昭和期の学監たち

第6節 昭和前期の教員の横顔

第7節 専務理事大蔵公望の改革路線

第8節 専門部開拓科・武徳科(司政科)の設置

第9節 戦時教育体制への序奏―教育審議会の設置

第10節 戦時下の大学

第11節 五代学長宇垣一成

第2章 地域研究の学統

第1節 本学地域研究の淵源

第2節 朝鮮研究

第3節 満州研究

第4節 中国研究

第5節 南洋研究

第6節 ロシア研究

第7節 南米研究

第8節 イスラーム研究

第9節 その他の地域研究

第3章 昭和前期の学生生活

第1節 麗澤会・拓殖研究会・報国会

第2節 寮・塾生活

第3節 学生の諸活動

第4節 学生諸団体の海外研修

第5節 戦争と学徒

第4章 昭和期における東洋協会事業

第1節 業域の拡大

第2節 昭和期の海外兄弟校

第5章 海外に雄飛する卒業生

第1節 台湾

第2節 朝鮮

第3節 満州

第4節 中国

第5節 南洋

第6節 その他外国

第7節 日本の敗戦と外地

終章 終戦と大学

第1節 戦災を蒙った学園

第2節 それぞれの八月十五日

附 拓殖大学戦没・殉難者一覧