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フリー中国語通訳 須磨先輩、母校で講演を行う

須磨みのり講演

勇気と信念で道を切り開いてほしい

2013年11月26日、拓殖大学アフガン会副会長の須磨みのり先輩(大阪市在住、中国語学科91期)が、拓大中国語学科1年生を対象に、中国語を学習するうえで大切にしてもらいたい考え方について、自身の体験を交えて講演した。この講演は、学生の語学に取り組む情熱を刺激する為に、日中関係で活躍している卒業生を招き、年に1回開催されている。

当日は、中国語学科長の立松昇一先生や、前中国語学科長の安部靖彦先生を始め、50人程の学生が講演を聞きに集まった。学生は就職の厳しさを既に意識してか、皆真剣な眼差しで演壇を注視し、ときおりペンを動かしながら熱心に講演を聞いていた。

須磨先輩は大阪にある裁判所の法廷通訳を皮切りに、フリーで活動を始め、その後仕事の分野を多方面に広げ、現在は語学学校の講師を主な活動の場としている。5年程前には、中国の胡錦濤前国家主席が来阪した時に開催された夕食会の通訳を任されるなど、レベルの高い通訳をこなせる数少ない一人だ。

しかし、ここに至るまでの道のりは、決して平坦ではなかった。拓大入学時は13億人と会話ができる言葉を学べると、希望に胸を膨らませていたが、入学早々のオリエンテーリングで短期留学した南京の街で見た、1989年当時の一般庶民の生活にショックを受け、その想いは次第に小さくなり、積極的に勉強に取り組まない学生生活を送ってしまった。 更に、卒業後は中国とは無縁の一般企業に就職し、中国語と距離を置いた生活を送る。

仕事は毎日同じ事の繰り返しで、安定はしているがそのことに逆に満足を得られなかった。何か満たされない思いを抱きながら日々を過ごすうちに、いつしか自分の心の中に、入学時に抱いていた情熱の炎が、小さいながらもまだ残っていた事に気がついた。

ちょうどこの時、商社マンで拓大同期のご主人が中国東北部の都市、瀋陽へ転勤することになった。再び中国語を学び直す機会がやってきたと仕事を辞め、ご主人と共に中国へ渡り、現地の大学に留学する。初心に帰り毎日6時間「覚えては忘れ、忘れては覚える」という語学学習の基本を数年間繰り返し、不自由なく会話を楽しむレベルにまで達した頃、再びご主人の転勤で帰国する事になった。

帰国後は語学が生かせる上に、イメージの良い通訳の仕事を始めたいと考え、人手不足であった裁判所の法廷通訳を始めることにした。同時に自分の語学レベルを客観的に知りたいと思い、通訳学校が主催するレベルチェックテストを受けた。

その結果は「通訳の勉強ができるには、もう少し基礎固めが必要」との判定であり、ひどく落ち込んだ。この時その学校の先生に、法廷通訳の仕事を始めたと話したところ「なんて大胆な。そんなレベルの高い通訳、あなたには3年早い」と言われ、この言葉が須磨先輩の情熱の炎を再び燃え上がらせた。「語学は使わないと覚えない、恥かかなかったら身につかない。」という信念に基づき、「やっちゃえばいいんだ」というスローガンを掲げ、あえて苦しい道を選択することにした。

須磨先輩は、今まで歩んできた道のりを振り返りながら、学生に語りかけた。

仕事を始めた当初は、能力的に対応できるか不安であり、失敗したら仕事や信用を無くすのではないかと、夜も眠られない時もあったが、それ以上に「通訳をやりたい」という気持ちが強く、この気持ちが自分を奮い立たせてくれた。

前に進むことしか考えず、依頼のあった仕事は全て請け、不安な気持ちは入念な準備で打ち消しながら、多くの経験を積んだ。10年で200件以上の裁判通訳を担当した。大事な判決文の通訳を間違えたことに閉廷後気がつき、正直に申し出て判決の言い渡しをやり直してもらうという失敗もしたが、常に中立の立場で誠実に通訳した。

利益が相反する両者の言葉を通訳するのは精神的にも辛いことだったが、被告人が最後に法廷を出ていくときに、小さな声で「ありがとう」と言ってくれたとき、裁判長から感謝の気持ちを伝えられたとき、その言葉だけで心が満たされ、体の奥底からやってきて良かったと思った。

あの時、通訳学校の先生に言われたとおりに足を踏み出すのをやめて3年待っていたら、今度は頭でっかちの知識が、私が足を踏み出す事をためらわせ、この喜びを感じられていなかったかもしれない。

いつもこれが最後の仕事だと自分に言い聞かせ、全力を出してやってきた。諦めず辛いこと、苦しいことに正面から立ち向かった結果、気がつくと語学力の向上だけでなく、人脈が海の外にまで広がっていたことに気がついた。

人間だから、自分が出来そうにないことは「大変だからやりたくない」と考えるのも無理はないが、私は大変とは「大きく変わるきっかけ」と考えている。出来ない理由、やらない理由を探すより、まずはやってみる。自分の価値を高める為に、やらないで後悔するよりやって後悔する道を選ぶ。勇気をもって取り組めば、道は自ずと開けると信じている。

中国語の学習を通じ、どんなことにも挑戦し自分の価値を高め、社会に出て尊敬される拓大生になってほしい。

拓殖大学アフガン会幹事長 丸山聡(92期)

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