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一、俺も行くから君も行け
  狭い日本にゃ住みあいた
  海の彼方にゃ支那がある
  支那にゃ四億の民が待つ

二、俺には父も母もなく
  生れ故郷に家もなし
  馴れに馴れたる山あれど
  別れを惜しむ者もなし

三、嗚呼いたわしの恋人や
  幼き頃の友人(ともびと)
  何処(どこ)に住めるや今はたゞ
  夢路に姿辿るのみ

四、昨日は東今日は西
  流れ流れし浮草の
  果しなき野に唯独り
  月を仰いだ草枕

五、国を出る時や玉の肌
  今じゃ槍傷刀傷
  これぞ誠の男児(おのこ)じゃと
  微笑む顔に針の(ひげ)

六、長白山の朝風に
  剣をかざして俯し見れば
  北満州の大平野
  俺の住家にゃまだ狭い

七、御国(みくに)を出てから十余年
  今じゃ満州の大馬賊
  亜細亜高嶺(たかね)の間から
  繰り出す手下五千人

八、今日の吉林(きつりん)の城外に
  木だまに響くいななきも
  駒の(ひづめ)を忍ばせて
  明日は襲はん奉天府

九、長髪清くなびかせば
  風は荒野に砂を()
  パット(またた)く電光に
  今日得し獲物(えもの)は幾万ぞ

十、繰り出す槍の穂先より
  竜が血を吐く黒竜江
  月は雲間を抜出(ぬきい)でて
  ゴビの砂漠を照すなり

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