台湾を築いた明治の日本人

 

表紙

渡辺利夫(産経新聞出版社、1,700円+税)

著者は1939山梨県甲府市生まれ。慶大卒の経済学博士。筑波大―東工大―拓大八王子に国際学部を築いた。元学長―前総長を経て学事顧問となって台湾研究に取り組む。拓大は2020年に建学120年を迎えた。拓大の前身は台湾協会学校(初代校長桂太郎)である。台湾は日清戦争に勝った日本に「この島、野蛮に付き不要」と押し付けた賠償地である。時代は日露戦争の10年前。未開の台湾を統治することは世界の植民地開拓の前身(オランダ・スペインが統治に失敗して撤退)にならい、世界が日本を笑いものないしは同情の目で見るか?

しかし、日本は全力をあげた。児玉源太郎陸軍中将(第4代台湾総督)は、のちの台湾総督府民政長官・後藤新平(第3代拓大学長)アメリカ帰りの新渡戸稲造(第2代拓大学監)に台湾の近代化を任せた。東京帝大卒の農業専門家も続々と志を継いだ。台湾の米、砂糖、いも、野菜の栽培促進は成功した。下村宏民政長官(のち朝日新聞副社長・終戦時の国務大臣・拓大6代学長)西郷菊次郎(宜蘭庁長、隆盛の子)桑原政夫(基隆市長―山口県防府市助役=拓大5期)など、本書には関係の深い先人が続々と並ぶ。「拓かでやまじ我が行く手」の拓大校歌が示すごとく、学友にも学生にも熟読を勧めたい歴史書である。

児玉の孫娘たちはオルガン、ピアノの国際的演奏家になった。児玉神社は江ノ島(湘南)に建てられた。西郷隆盛の子、菊次郎の長男(21期)も次男(26期)も拓大に学んだ。桑原の子孫は戦後の卒業生でもある。筆者には、なお続編を書き遺していただきたいものだ。(M)

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