国際協力アクティブ・ラーニング ワークでつかむグローバルキャリア
拓殖大学国際学部長・教授 佐原隆幸
教授 徳永達己(82期、商学部)
(弘文堂、1,800円+税)
グローバル時代に相応しい国際協力を学ぶ人への入門書
今最も注目されている教育方法アクティブ・ラーニングを通じて、建学以来拓殖大学の歴史の中で培われてきた国際協力の理念と手法を体系化!
近年、若者やシニアの海外ボランティア希望者が増加している。企業では開発途上国との業務提携や技術輸出が日常化し、とくにアジアを中心としたビジネス最前線は日本経済の生命線ともなっている。
グローバル化の影響もあり、日本の製造業の場合、海外生産比率及び海外売上高比率はそれぞれ4割の水準に近づいている。日本はあらゆる面で途上国を含む海外との相互依存関係が高まっているが、新型インフルエンザ、エボラ出血熱など感染症や食品の衛生など、途上国で発生している問題も、私たちの生活の安心・安全に直接影響を及ぼしている。長引く紛争により不安や絶望が膨張し、大量の難民が国境を越えて移動している。このように私たちの「今」の裏側にはいつも途上国の「今」があり、切っても切り離せない関係はさらに強くなっている。途上国の生活の安定が私たちの生活の安定に直結しているのである。途上国の貧困に目をそむけ問題の解決を放置していると、それは確実に、そしてますます直接的な形で私たちの貧困を引き起こし、深刻な問題を発生させるであろう。「そんなの関係ない」では決して済まないグローバル時代の真っただ中に我々は生きているのである。
このように国際協力の重要性は日増しに高まっているが、途上国で現地の人たちと一緒に協働し、成功を収める要件は情熱だけでは十分ではない。次々と発生するトラブルを解決する現場対応能力を身に付けるためには、多くの先人の知恵を学び、事前にトレーニングする機会が必要である。そこで、拓殖大学国際学部の佐原隆幸学部長と徳永達己教授の共著により、これまでに類書のない全く新しいスタイルの国際協力の入門書が弘文堂より刊行され評判を呼んでいる。
拓殖大学は、とりわけ経済・社会整備が遅れた地域の開発に取り組む人材養成を建学の精神としてきた。国際学部はこのような拓大の伝統を踏まえ、百周年目にあたる2000年、あらためてアジアやアフリカなど途上国支援をおこなう国際開発、国際協力に資することを目的として創設された学部である(設立当時は国際開発学部)。本書は国際学部で継承されてきた拓大の源流を受け継ぎ、グローバル化の時代に相応しい新しい国際協力の入門書を意図して国際学部の理念と講義構成を体系化・編纂したものである。
本書は4部から構成されている。
第Ⅰ部「現状を知る」では、水不足など途上国の抱える代表的な4つの開発課題についての取り組みを紹介する。これらは国連のミレニアム開発目標でも取りあげられたが、それ以前からも、また現在も途上国が取り組み続けている古くて新しい課題について取り上げている。
第Ⅱ部「方法を知る」では、国際協力の基礎知識を学ぶ。プロジェクトとは何か、問題解決型の計画手法とは、参加型計画手法とは、PLA手法とは、政府予算でおこなう国際協力とは、組織制度づくりとは、小規模融資とは、といった国際協力に携わる者にとって基本的で必須なテーマを扱っている。
第Ⅲ部「課題を知る」では、最新の課題を取り上げる。環境問題、エネルギー問題、食糧問題、感染症問題、そしてグローバリゼーションの問題について学び、ミレニアム開発目標を引き継ぐ持続可能な開発目標への展望をおこなう。
第Ⅳ部「実践ワーク」では、国際協力の現場で実際に使われる手法を使った分析に取り組むことにより、国際協力の仕事のイメージをつかめるようになっている。
本書の主たる対象は、国際協力に興味を持っている学生であるが、企業活動やボランティアを通じてこれから国際協力の実務に直接的、間接的に関わっていくような方はもちろん、日頃国際情勢・海外事情に深い関心を寄せる学友諸氏にも国際社会を理解するうえで最適な入門書、学び直しの書として推薦する次第である。なお、本書は実際に青年海外協力隊や社会起業の活動を通じて途上国の開発に向けて現地で活動している若い学友達の様子も数多く紹介されるなど、中身はまさに拓大版の「国際協力入門」といった趣の内容となっている。アマゾンのカスタマーレビューでも高い評価が続々と寄せられており、学友にとっては必読の書といえよう。