文藝春秋 9月特別号

 

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(文藝春秋、970円)

芥川賞発表 受賞作2作全文掲載(又吉直樹 羽田圭介)と独占手記「妹・川上慶子と私の三十年」/「昭和九十年」日本人の肖像―以上特色満載号である。この中で、お笑い芸人を描いた又吉氏の作品に「おや?」と思わせる一文を見つけた。漫才師仲間の「神谷さん」が「伝記を書け」「本を読め」と強く勧める。その神谷さんが―
 「新渡戸稲造が何者か知ってるか?」
 「五千円札の人ですよね?」
 「そうや、あの人もいろいろやった人やねんで。そんなんも書いてたわ」
 「そうなんですね。何をした人なんですか?」
 「忘れたけど、読んだときは感心したん覚えてるわ」

受賞作の中に母校拓殖大学が今、後藤新平第3代学長と並んで記念ホールに胸像が建った新渡戸稲造博士(第2代学監・初代名誉教授)の名前が出るとは思わなかった。漫才師がたたえる偉人なのだ。卒業生や在学生こそ新渡戸さんの伝記は読まねばならない。後藤―新渡戸は大正中期における母校中興の祖なのだ。もう1つ、中曽根康弘(12代総長)「大勲位の遺言」もある。(M)