藤渡辰信 前総長・理事長の叙勲祝賀会開催

   2014/04/01

藤渡辰信 前総長・理事長の叙勲祝賀会①

10月28日、菊薫る秋の佳き日に、拓殖大学前総長・理事長 藤渡辰信先生の「旭日中綬章受章祝賀会」がホテルニューオータニ「芙蓉の間」で開催されました(既報のとおり6月に大学主催で開催されておりますが、今回は全国有志による祝賀会となりました)。

このたびの春の叙勲は、長年にわたり我が国の教育の振興に尽力されたご功績によるものでありますが、いうまでもなく、「拓殖大学中興の祖」としての先生の比類なき母校へのご貢献も特筆されるところでありましょう。ちなみに、会場となった「芙蓉の間」は、本学関係者にとって記念すべき平成12年の「拓大創立百周年記念式典」が挙行された場所でもありました。当日は、学友を中心に全国各界から150人を超える方々がお祝いに駆けつけて、和やかな雰囲気の中で会は進行されました。

まず、発起人を代表して藤渡先生の同期で親友の村上正邦先生(54期、元参議院自由民主党議員会長)より、格調高く、かつ力強い挨拶があり、つぎに、森本敏防衛大臣、茅原郁生拓大名誉教授、馬頭哲弥元和歌山県議会議長(54期)、大相撲の千賀ノ浦親方(72期)、と、温かくも藤渡先生ゆかりの錚々たるご来賓からの祝辞が続きました。さらに、乾杯の音頭をお取りいただいたのは、(社)農村資源開発協会理事長の頭山興助先生であり、これまた素晴らしいお言葉に一同感激もひとしおでありました。

宴も佳境に達した頃、空手部3年吉田直之君の見事な「演武」(五十四歩大)によって「拓大空手部、此処にあり」の心意気が堂々披露され、会場を大いに沸かせてくれました。そして、参集した学友から藤渡先生へのお祝いの言葉は尽きることなく、燃えるような思いに結実し、会場内各所で歓談に花が咲きました。

最後に、藤渡先生より、皆様への思いと母校愛あふれる謝辞があり、春風の舞うような余韻を残しつつ閉会となりました。

前拓殖大学総長・理事長 藤渡辰信君の叙勲を言祝ぐ

元参議院自民党議員会長 村上正邦(五十四期卒)

君は川流を汲め 我は薪を拾わん―。

松下村塾、適塾に並ぶ三大私塾の一つ、豊後国日田に、咸宜園(かんぎえん)を開いた広瀬淡窓の詩篇の一節にある如く―

われらは、目指すところを他としつつも、肩を組み、高歌放吟、青春を謳歌したり、夜を徹して、人生を語らい、哲学を論じ、国の行く末を憂いたり。

君は、諍いを好まず、和を愛す、無我の人なり。

清廉にして謙遜、損得打算なく、足るを知る人なり。

重厚にして、寡黙豪胆の人なり。

世渡りは、愚直にして、鈍であり、ひたすら努力の人なり。

不器用なれど、何事にも、押忍の気迫あり。

外連(けれん)(はな)なくとも、いぶし銀の底光りあり。

君は、君が得意の、空手に先手なしの極意を生きたる―

執着なき、純情、朴訥の人なり。

一点一画、粗忽にすることなく、正直一途の人生なり。

今も思い巡るは、ともに、鉄幹を謳い、蒙古放浪歌、昭和維新の唄を逍遥し、皇居のお濠を遊歩せり。ある時は先輩の門戸を叩き恩師に教えを乞い、書に親しみ、ある時は高尾山や長瀞へ徹夜行脚を敢行し、紅陵祭にはファイアストームを囲みて、キットカチマス踊りを乱舞せり。

君が愛読せし。吉川英治の宮本武蔵、中里介山の大菩薩峠。

吾に語りし、幕末の剣豪、島田虎之助の「剣は心なり。心正しからざれば、剣又正しからず」の一節は、我が生涯の座右の銘となる。決断、実行の心得の第一義なり。我、不退転の覚悟の本源となる。

君ありせばこそ、我あり、よき友と縁を得たり。

遡ること六十余年、昭和二十七年。

時あたかも、世に学園紛争の嵐吹きすさび、思想乱れ、田園荒れなんとす、まさに、風雲急を告ぐ激動の折。

君は長崎の地より、此処、茗荷谷の一画に来たりて、誰が名づけしか、三国志になぞらえ、臥竜窟と呼びたる学舎、五丈原と名づけし校庭、風に嘯く摩天林の下、雲に雄叫ぶ麗沢湖の畔、母校拓殖大学にて、我らは邂逅せり―。君の出立ちは弊衣蓬髪。

孔子、孟子、韓非子読み、孫文、魯迅を語りて、近代中国革命を嘆き、いまは愛国無罪の騒乱を悲しむも大陸への郷愁やみがたく恩讐をこえたり。

思うは、雄図の志空しく、黙してアジアに散りし、多くの有名無名の先達。

先人の拓きたる歴史の足跡を辿り、尊い犠牲で得た教訓を実相世界を実現せしめる羅針盤とすべし。

生々流転、有為転変、時は流れ、吾らはともに八十路を迎え今日、君は旭日中綬章の栄を受け、天皇に拝謁を賜る栄光に浴して吾は、これを誇りとする。

同窓の名誉として、燦然たるや。

されど、受賞の誉れは、終点の褒美にあらず、道中の奨励なり。

吾らは、これからも、人生創造の厳しき旅路を歩まん。

君は、大学の経営に功をなし、教育に天職を得て、世に尽くし吾もまた、天の命じるままに、政に身を焼き、未来の礎となるを夢見る。

胸中、忸怩たるものあれど、終生不惑。

選びし道は、いばらの道なれど、われの歩む道は、ただ一つ。

君も吾も、未だ道半ばにて、日々、新たな出立―。

母校創立者、桂太郎候の建学の精神に、積極進取の気概と世界のあらゆる民族から敬愛される教養と品格を具え、海外雄飛を志す有為の人材の育成とあり。

学監、新渡戸稲造公は「地の塩となれ」と説きたる。

また、元総長、矢部貞治先生は、凡夫のなかにこそ、人情あふれる本物の人間ありと説きたる。人を求め、時に酒を愛し、談論風発、寸暇を惜しみ全国遊説したり。

「人となれ人」「人となせ人」の大思想なり。

前総長藤渡辰信君、君は()う、母校建学の理念、開拓の心にありと。

君は重ねて()う、国家の建設、政治と教育は不可分なりと。

命もいらず、名もいらず。金もいらぬ人こそ、艱難を共にして国家の大業を成し得るなり。

南洲公の、この心意気こそ、母校拓大の心意気なりや。

まさしく、至言なり。

古人曰く、国家百年の計は教育にあり―。

教育の荒廃いま将に極まり、物質優位の世相をうみ、人は傲りて世の混濁泥水の如し。

現代文明は人心を蝕み、人々は科学の奴隷となり、人徳、地に堕つ。

大自然の摂理と冥加に、畏敬と感謝あるべし。

君は教育に、吾は政に、余す命ある限り、ともに、闇を滅する光世の腐敗を断ち切る地の塩にならん。

日月()きぬ、歳月我を待たず。

今日、只今の心こそ、まさしく大事なり。

傘寿を迎えた今、伴侶に感謝し、家族を慈しむ其の胸中の(まこと)こそ大事なり。

叙勲を祝う今日、胸一斗の感慨甚深なるものあり。

菊薫る叙勲の朝の傘寿かな

ありがとうございます。

藤渡辰信 前総長・理事長の叙勲祝賀会②藤渡辰信 前総長・理事長の叙勲祝賀会③