インドの大学院で学ぶ

   2017/10/20

インドの大学院で学ぶ①

斎藤 隆太(105期、国際学部)

私は今年の7月から、インドの首都デリーにある国立大学デリー大学のソーシャルワーク学部修士課程で学んでいます。

留学の経緯

インドに留学をしたい!もっとインドのことを知りたい!!これが私の大学時代からの夢でした。しかし、実を言うと拓殖大学に入るまではインドへの関心はほとんどありませんでした。学部の第2言語(地域言語)選択で偶然選んだヒンディー語(インドの主要言語のひとつ)との出会い、たまたま入った印度パキスタン研究会でのクラブ活動を通じて、みるみるうちにインドへの興味が膨らんでいきました。決め手となったのは個人研修奨学金という拓殖大学の制度を使ったインドへの短期語学留学です。停電や豪雨に悩まされ、飲み水を確保するために走り回り、同じ研修仲間達と必死になって勉強し生活したあの1ヶ月半の体験は強烈でした。はじめてヒンディー語が上手く話せたときの嬉しさは、今でもはっきりと覚えています。

大学卒業後はビジネスイベントを企画運営する会社に就職をしました。けれども大学の時に感じたインドとの、友人達との、ワクワクした気持ちが忘れられず、ヒンディー語留学を決意し、2009年の夏インドへ留学をしました。

1年間のヒンディー語留学の後、インド文化交流評議会のインド政府奨学金留学生制度に合格し、インド政府の国費留学生として奨学金を頂きながら、2011年の7月からデリー大学で勉強をしています。専攻はソーシャルワークです。日本ではあまり馴染みのない学問かもしれません。ソーシャルワークとは簡単に言うと、”社会や個人の成長や、より良い変化を促し助けていくこと”です。私の通うデリー大学はインドでも最古のソーシャルワーカー(ソーシャルワークを行う人のこと)の育成機関のひとつです。

私がこの学部に進学を決めた理由は、ソーシャルワークこそがインド社会やインドの人々のことを知るための最良の学問だと思ったためです。それに私が拓殖大学で学んだ国際開発の知識も生かすことができるとも考えました。

大学の授業について

インドの高等教育は主に英語で行われます。そのためインドでは英語が出来ることが良い職や学歴を得るためには必須です。英語が出来るか出来ないかで大きな格差が生まれており、そのことが社会問題になっています。

大学の授業は月曜日から土曜日まであります。授業はもちろん英語です。そして時たまヒンディー語も交ざります。すさまじい速さで話す先生の講義内容をノートに書き取らないとならないため、クラスメイトにしばしばノートを見せてもらっています。クラスメイトの英会話力や、私の数倍もの速さと正確さでノートに英語を書き取っていく記述力にはいつも驚かされ、悔しい思いをします。授業中の質問やディスカッション時の発言の積極性も日本とは比べ物になりません。疑問に思ったことや主張があればすぐに発言をします。的確な発言があれば拍手が起きますし、そこから話し合いが発展し授業が中断することもしょっちゅうです。逆にほとんど発言ができない私は、クラスメイトからなぜそんなに静かなのかとよく言われます。

授業ではソーシャルワーク論やインド社会の構造、政治などに加え心理学も勉強しています。週に2日、NGOやスラム地域でのフィールドワーク(現地実習)が課せられており、私は南デリーの低所得地域にある学校で子ども達に英語などを教えています。他にも毎週現地実習のレポートの提出や、グループ発表、ディスカッションなどもこなさなければならないたま、なかなか生活は大変です。

インドで暮らす

「インドで学生をしている」と人に話すと「なんでインドなの??」「駐在員とかじゃなくて学生??」とよく聞かれます。確かに日本では留学といえば欧米が主流ですし、インドに留学をする人はかなり稀です。けれどもインドには多くの国から多彩な留学生が集まってきています。アジア圏では韓国と中国の学生が非常に多いです。ベトナムやカンボジアからの留学僧。タイ、ネパール、モンゴル、中央アジアのカザフスタンやウズベキスタン、フランスやポーランド、それにガーナなどのアフリカからの学生も沢山います。学位の取得だけでなく英語やヒンディー語のスキルアップを目指してみな勉強に励んでいます。それに舞踊や 伝統音楽を勉強しにきている留学生も大勢います。

インドを旅行するのと、インドで生活をするのはまったくかけ離れた体験です。旅行ではただすれ違うだけの些細な出来事が生活に直面してきます。大雨が降ると膝上まで水に浸かりながら通学をしなければなりませんし、停電や生活インフラの悪さにもよく悩まされます。けれどもクラスメイトや近所に暮らすインド人との深い交流は生活をしなければ味わえないものですし(イライラしたりもしますが)、お祭りの前には街全体がウキウキとした高揚感に包まれます。学校や課題が終わり、夕方の買出しの帰りに市場の外れで飲むチャイの味は一日の疲れを癒してくれます。同じ世代の若い日本人留学生や社会人も少しずつ増えてきています。インドで自分の将来や夢を切り開こうとしている友人達の姿勢は私の大きな目標であり励みです。

インドは今大きな転換期を迎えていると言われます。デリーだけを見てみても私が暮らした3年間でも大きく様変わりしました。大きな建物やショッピングセンターが次々と生まれ、メトロが走り出し、停電が減り、生活の利便性は劇的に変化しました。ほとんどの人が携帯電話を所有し、道は車とバイクであふれ返っています。一方で未だにインドには多くの社会問題が残っています。世界の貧困層の多くがインドで暮らし、首都のデリーでさえいくつものスラムが点在し、路上生活者の姿を頻繁に目にします。

今の私の一番の目標は、修士課程の1年目で自分の勉強やインド社会についての知識を深めるとともに、語学力の底上げをし無事に学位を取得することです。卒業後もインドと日本間で働きながら、この国と関わっていきたいです。これから先、インドと日本がどのような発展を遂げていくのか。社会が変化する代わりに何を失って何を得るのか。インドの中に身をおき両国をずっと見つめていきたいと思います。

齋藤君は国際学部を卒業し念願のインドのデリー大学大学院に入学しました。留学先のデリー大学はインドで屈指の名門校ですから、インド人でも中々入学できないそうです。現在はインド政府から奨学金をいただいています。入学のために、その一助を学友会がお手伝いしましたことも少々お知らせしたいと思います。

齋藤君は、現在5名ほどの拓大卒業生とインド国内で連絡を取り合っているそうです。近々学友会のインド支部設立になっていくと思われます。益々、発展していくインドで、増えていくだろうと予想できる拓大関係者たちとできっと、素晴らしい支部が設立されていくとだろうと、学友会本部では齋藤君に熱い期待と支援を送りたいと考えております。

学友会本部 村上貴美子

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