七人の龍馬/新懐旧国語辞典

   2014/04/30

七人の龍馬

七人の龍馬

出久根達郎 編著(講談社、1600円=税別)

NHK大河ドラマ「龍馬伝」は佳境のうちに終わりを告げた。この本の帯にいわく<”坂本龍馬”副読本の最高峰!>と。内容は司馬遼太郎「竜馬がゆく」から、講談、戯曲、子母澤寛・山岡荘八の小説、映画の脚本、書簡まで、数々の書物から「名セリフ」を集めて龍馬像に迫る。それは実在の龍馬より、何倍も魅力溢れる龍馬名言集だ。

ある意味、この本は龍馬100年史の面白さを持つ。明治安田生命、人形の久月、アサヒビールはじめ朝日新聞などがアンケートをとると第1位に必ず坂本龍馬と答えが来た。戦前は剣の使い手で勤皇の志士、戦中は日本海軍の創始者、戦後は小説に代表される「人間龍馬」―。

NHKでは三菱財閥の創業者・岩崎弥太郎が絡んだ。著者は、本の後記で「凶器」は醤油と断定した。暗殺された近江屋が醤油屋だったのだ。

ついでながら薩摩藩の吉井という武士。明治維新後に功労を賞されて華族に列せられた。上野の山に西郷さんの銅像を作った有志の1人。その子息が”歌の伯爵”吉井勇。そのまた子息が拓大の隣、小日向台町の後楽園社宅から毎日、拓大構内を歩いて通勤していた(後楽園球場部長、学習院大学野球部監督)のである。

新懐旧国語辞典

出久根達郎(河出書房新社、1600円=税別)

文藝春秋の月刊誌「諸君」ほかに掲載された分とか、「セピア色の言葉辞典」に収録されなかった分とかを一挙にまとめた言葉学的読み物だ。本の帯に<失われゆく時を求めて>とある。滅びゆく言葉、不思議な言葉、気になる言葉、ひと昔前の言葉…、そしていずれも素敵な言葉を収集、時代への愛情をこめて、味わい深く読める辞典エッセイ。

内容は「みいちゃん」「はあちゃん」の語源とか、「ゴマン」「チェッ」など日ごろ気になる耳ざわりな会話とか、「バック・シャン」などが解説される。ちょっと込み入った話で川端康成の「雪国」に出てくる「人さし指」は、よほど以前から国文学者の間で”教えにくい”文章として問題提起されているのだ。

他に北京オリンピックをテレビで見て柔道の「掛け逃げ」をいやな言葉だ―と著者は思うのである。

新懐旧国語辞典