南極の巻田先生から第3報

   2014/05/04

南極の巻田先生から第3報

こんにちは。

今回は何の目的で、ブラジル域から南極まで観測を行っているのか、簡単に説明したいと思います。

(1)南米大陸の南部域には宇宙からたくさんの粒子が入射していることが人工衛星(NOAA衛星)で観測されています。(図1)

(2)何故、南米大陸の南部域に入射粒子が多いのかと言うと、この領域の磁場が世界の他の地域と比べ、異常に弱いからです。(図2)図によると、ブラジル南部域の磁場強度は24,000nT以下で、日本付近の磁場強度(47,000nT)の半分しかありません。磁場の弱いこの地域に粒子が入射しているのです。私はこの領域のことを「地磁気ホール」と名前をつけました。

(3)このような入射粒子が地上にどのような影響を与えるのか良くわかっていないため、観測機器を設置して調べています。入射領域は広い範囲にわたっているため、現象を捕らえる為には、観測点も多くとる必要があります。私はこの10年間にブラジルの赤道域から南極までの10カ所あまりに観測機器を設置し観測を行っています。(図3)

(4)今回南極に設置した銀河電波受信機について説明します。入射粒子を地上で調べるのに、銀河電波の強度を測定します。図4のように銀河中心付近からやってくる電波は入射粒子が振り込んでいる場所で吸収を受けて弱くなることが知られています。そのため、銀河電波の強度をモニターすれば、入射粒子についての情報を得ることが出来るのです。図のように2次元的な吸収域を求めるには16本(4×4)のアンテナが必要で、すでに南米4ヶ所に設置しています。ただ、今回の南極では単に2本のアンテナにより、時間的な強度変動や偏波特性を調べています。なお、得られたデータはインターネット回線により、日本でリアルタイムにモニターできます。

以上、簡単ですが、私の研究について説明しました。では、また。

巻田 和男

銀河電波観測地球磁場強度
南米での観測粒子データ