タンザニアでソーラーランタンのレンタル事業を行う秋田智司さん

 

タンザニアのキオスクでソーラーランタンのレンタルを実施している国際開発学部1期生秋田智司さん(102期)が、今年のアフリカ開発会議で安倍首相からも紹介されました。

TICAD VII「官民ビジネス対話セッション」・安倍晋三日本国総理大臣ご発言 | 外務省

秋田智司君のこと

学事顧問 渡辺利夫

この50年余、いろんな大学で教員生活を送らせてもらった。送り出した学生はどのくらいの数になろうか。初期の卒業生はすでに定年退職、教職員に就いた者の何人かは名誉教授になったりしている。

20年前、拓殖大学に奉職、国際開発学部(現・国際学部)の創設に関わって働いたことが思い出される。定員は1学年300名、4学年で1,200名だった。第1期生ともども八王子のキャンパスで過ごした1年間が、私の教員生活の中では最も鮮明な記憶として残る。「開発」とは「現場」のことだといい、講義科目の開発経済学を私はフィールドエコノミクスと呼んでいた。教場より現場で学生を鍛えようという学部創設の精神であった。

TICAD(アフリカ開発会議)がこの8月、横浜で開かれた。挨拶に立った安倍晋三総理が1人の青年を脇に立たせ、「1100を超えるタンザニアのキオスクでソーラーランタンのレンタルを実施し、連日、数万人が借りにくるまでに育てた会社。それが東京のWASSHAです」と、これを起業した秋田智司君を聴衆の前で紹介しているではないか。

秋田君は国際開発学部の第1期生。私のゼミに入り、卒業後の進路に何かと悩みを抱え幾度か私を訪ねてきた。しばらく前から、「秋田君、タンザニアの農村でデジタルグリッドのビジネスを始めて軌道に乗ったらしいんですよ」といった話をアフリカ開発に強い関心を持つ同僚の甲斐信好君から聞かされてはいた。でも、まさか、日本政府が主導する首脳級国際会議の場で総理によって紹介されるとは。

タンザニアの未電化地域の小規模売店でLEDランタンのレンタルサービスをやっているという。現場に根ざした人間でなければ思いもつかないビジネスである。シャンプーや味の素を袋に小分けにして売っている露店をタイの田舎などでみかけたことはあった。当初は社会貢献のつもりで始めたのだが、ビジネスにしなければ到底「サステナブル」なものとはならない、というのが秋田君の次の発想だったという。SDGsといえば少々しかめつらしいが、要するに秋田君流のことなのであろう。

(「Voice」12月号より)