押忍とは何か?
大森敏範(三五館、1,200円+税)
東京オリンピックの追加種目として採用された、日本発祥の武道・空手。空手界で使われる「押忍」は、いまや“OSU(OSS)”となり、世界200の国や地域で用いられている。「押忍」という言葉はもはや、「世界語」であり、世界で日常的に最も用いられる「日本語」とも考えられる。しかしその隆盛の傍ら、本当の意味と成り立ちについては、諸説紛々入り乱れ、今まで誰も明らかにしようとしていない。
「押忍ッテドウイウ意味デスカ?」という異邦人の問いかけに、答えられる日本人はいるだろうか?いったい「押忍」とは何を意味する言葉なのか?なぜ「押」と「忍」を合わせて「オス」と読むのか?それらについては曖昧にされてきたと言ってよい。日本人である筆者は、その曖昧さに隠されている謎に着目、徹底的に事実にこだわりつつ、その解明に向け、時空を超越した旅を開始。関係者の証言、拓大生の日記、記録、様々な証言、資料に当たり、微に入り細を穿ち、「押忍」という言葉の根源へと迫っていく。
筆者は先ずその代表的「諸説」4つの整理から論を起こす。そして少なくとも漢字表記ではない「オス」の源流は、明治期に創設された拓殖大学に求められる、ということが判明する。戦前の拓大生は、いったいどのような用い方をしていたのか?なぜそのような言葉が発生したのか?その言葉に忍ばされていたのは、戦前~戦中~戦後にかけ、拓殖大学の学是と校風に魅せられ、茗荷谷の学舎に集い、祖国を顧みることなく海外雄飛と拓殖の未来へ夢を馳せ、青春の血を滾らせた、数多くの無名の若者たちの熱い思いであった。
本書は「押忍」の源流と、世界にまで広がっていった遥かなる伝播の道のりを、多数の関係者の証言、発掘した文献によって解き明かすものである。
すべての拓大関係者に、新鮮な感動と驚きをもたらす作品である。
「押忍」をめぐるキーワード
- 拓殖大学
- 木村政彦
- 大山倍達
- 中山正敏
- 塩田剛三
- 金澤弘和
- 日本空手協会
- 合気道養神館
- 國際松濤館
- 極真カラテ
- フルコンタクト空手
- ブラジリアン柔術
- オランダキックボクシング
- K-1
- UFC
(著者)
大森敏範(おおもり・としのり)
1961年、東京生まれ。日本大学卒業。大学入学と同時にキックボクシング部入部。
デビュー戦での1ラウンド8秒KO勝ちは史上最短KO記録。『最強格闘技の科学』(福昌堂)にキックボクシング代表として登場した。
また、日本初の格闘技専門スポーツカフェ「Fighting Cafe コロッセオ」経営の傍ら、K‐1公認審判員、K‐1公認審議員を歴任。
現在、中高年のためのキックボクシングイベント「NICE MIDDLE」を主宰。株式会社アスリートフーズ代表取締役。