ブラッセル日本人学校 現地報告①

 

在学教育施設 ブラッセル日本人学校(ブラッセル補習授業校)

校長 中村 宏(73期)

ブラッセル日本人学校現地報告①

本年度初めての学習参観日

4月8日の赴任以来、早いもので約半年が過ぎました。これまで2校の日本人学校赴任経験がある私にとっても、補習授業校への赴任は初めての経験であり、この半年間は驚きや戸惑いが多くありました。しかし、多くの新しい経験をする中で、補習授業校でがんばるたくさんの児童生徒がとても輝いて見えました。

補習授業校って?

ブラッセル日本人学校現地報告②

スポーツデーでの綱引き

「日本人学校」はすでによく知られた存在ですが、「補習授業校」は耳慣れない言葉かもしれません。いずれも主として日本人児童生徒を対象とした文部科学省認定の在外教育施設ですが、全日制である日本人学校に対して、補習授業校は、多くの場合土曜日のみ授業を実施している学校です。ほとんどの児童生徒は、通常月曜日から金曜日までは現地の学校やインターナショナルスクール等に通っています。そして、土曜日になると補習授業校に登校して日本語で、日本の教科書を使って授業を受けるのです。

本校の正式名称は「ブラッセル日本人学校補習校」(文部科学省における校名は「ブラッセル補習授業校」)です。ブラッセル日本人学校補習校では、小学部1年生から中学部3年生まで約230名が在籍しており、土曜日に国語と算数(数学)を中心に学習しています。

国語…漢字と格闘する子供たち

ブラッセル日本人学校補習校はベルギーの首都ブリュッセルにあります。ベルギーの正式国名は「ベルギー王国」で、西ヨーロッパに位置する連邦立憲君主制国家です。隣国のオランダ、ルクセンブルクと合わせてベネルクスと呼ばれます。欧州連合(EU)の原加盟国であることや、地理的には欧州のほぼ中央部に位置する交通の要衝にあり、その主要機関の多くがブリュッセルに置かれているため、ブリュッセルはEUの首都とも言われます。

ブラッセル日本人学校現地報告③ブラッセル日本人学校現地報告④

ベルギーで話されている言語種類の実態は日本と比較すればかなり複雑です。住民はオランダ語のベルギー方言とも言うべきフラマン語を話すフランデレン人が58%、フランス語を話すワロン人が31%、他にドイツ語を話す地域もあります。つまり、大雑把に分けると、ベルギーの国土は、使用言語により、北部のフラマン語(オランダ語)圏、南部のフランス語圏、及びそのごく一部のドイツ語圏というように、3つの言語共同体に分かれており、それぞれに地方公用語があります。なお、首都ブリュッセルはオランダ語の使われるフランデレン地域に囲まれていますが、フランス語話者が8割以上を占めています。(上記一部「ウィキペディア」より引用)。

このことは、ブラッセル日本人学校補習校の児童生徒が月曜日から金曜日まで通っている現地校やインターナショナルスクールで話されている言葉にも現れており、フランス語、オランダ語、英語、ドイツ語、リトアニア語等々実に様々です。その児童生徒が週に一度ブラッセル日本人学校補習校に来て話す言葉はもちろん日本語です。校内では、日本語が多くの言葉の世界にいる児童生徒の共通語となっています。

ブラッセル日本人学校補習校の児童生徒が「やっかいで難しい」と感じているのは何といっても漢字でしょう。各学級の授業を見て回っていると、学習の中で大きな割合を占めているのが漢字学習です。担任が力を入れている事の一つですが、同時に負担に感じている児童生徒がいるのも事実です。もちろん自ら進んで新しい漢字を覚えている児童生徒もいます。

一般に、日本国内や日本人学校と比べ、補習授業校での漢字学習はより困難な面があります。「漢字なんて勉強しなくても困らない」生活があるからです。そこでは、漢字学習に対するよほど明確で積極的な目的意識がない限り、学習者である児童生徒にとって、漢字学習は負担であり余計な事であり続ける可能性があります。この点への対応としては、家庭での協力が不可欠です。「何のために漢字を覚えるのか」「漢字を覚えてどんな良い事があるのか」の具体例を、機会を捉えて子どもたちに知らせるなどの手立てもお願いしています。

算数…計算方法や数字の書き方の違い

国語に比べて算数(数学)は現地の学校と共通点が多そうですが、それでも様々な違いがあるようです。かけ算の文章題で式を書くときも、被乗数と乗数の関係が逆さであったり、数字を手書きするとき、数字そのものの形がかなり違ったりすることもあります。下は手書き数字の一例です。こうして一覧形式で見れば「なるほど」と思えますが、この現地仕様の数字だけを(しかも書き殴ったような字で)突然見せられると、日本人には分からない場合が多いです。

普段は現地校に通っている児童生徒は、ブラッセル日本人学校補習校での学習時にも現地仕様の数字やアルファベットがついつい出てきてしまうことがあります。両方式の学習はやはり大変ですね。

楽しい行事「全校遠足」

ブラッセル日本人学校現地報告⑤

地下鉄で移動する小学部上学年児童

ブラッセル日本人学校補習校は年間40回の授業日があります。この中で唯一通常学習が無い授業日が全校遠足の日です。児童生徒は、この日をとても楽しみにしています。そして、遠足そのものももちろんですが、持って行くお弁当もとても楽しみなようです。なぜなら、普段通っている学校にはあまり持って行かないようなバリバリのごちそう満載の日本風弁当を持って行けるからだそうです。そして、小学部下学年、同上学年、中学部の3つのグループに分かれてそれぞれの目的地に出発します。

今年は小学部上学年のみ地下鉄で移動し、他のグループは貸し切りバスで移動しました。朝から曇天で雨が心配されましたが、幸い全グループが雨に降られること無く、楽しく遠足を終えて無事帰校しました。