村中博文氏講師でガダルカナル島遺骨収容についての講演会開かれる

   2014/07/10

ガ島用告知ビラ

9月15日(日)、拓殖大学アフガン会は、大東亜戦争激戦地の一つであるガダルカナル島(以下ガ島と称す)で行われている旧軍将兵の遺骨収容活動についての講演会を、この活動に従事している当会顧問で海上自衛隊OBの村中博文先輩(空手部、70期)を講師にお招きし、JR大阪駅近くにある中華レストランにて、弊会の活動の一環として開催した。

遺骨収容活動は、民間有志と大学生を中心に当時の激戦地で実施しているが、ガ島については、特に日本から飛行機を乗り継ぎ約18時間の南半球にある地形困難な瘴癘の地であること、さらに政府等による支援がほとんどないことから、やむを得ず自主派遣(ボランティア)という形で行っている。

そのため、活動費は参加各位の熱意に頼らざるを得ず、とりわけ学生については、彼ら自身がアルバイトなどで用立てた費用と戦史検定等の実施で得た資金を一部負担することで捻出するほかなく、継続的な活動の実施はきわめて心もとない現実にある。

全ての英霊に祖国に帰還して頂くには、永い年月と継続的な人的貢献が必要であることから、出来るだけ多くの方にこのような事情を含んだ遺骨収容活動の現状を知って頂き、深いご理解とご支援を得たいと考え、拓大関係者以外にも声をかけ、開催したものである。

当日は台風18号が大阪に接近し、朝から激しい風雨が吹き荒れる中、他県から駆け付けて頂いた先輩など拓大関係者13人、一般の方11人、計24人の方が参集された。

1時間に及ぶスライドを駆使した講演は、参集者の興味を引き、心を打ったようで、講演時間はあっという間に過ぎてしまった。しかし参加者の熱意は冷めやらず、熱心な質問はその後に開かれた懇親会まで続き、反響の大きさに村中先輩も驚いたご様子であった。

ガ島は周囲をサンゴ礁で囲まれた熱帯に浮かぶ小島であり、小石と瓦礫だらけの痩せた土地とジャングルが広がる。当時、北東部のわずかばかりの平地に、日本軍は南洋の制空権確保のため飛行場を建設し完成させた。しかし、ラバウルからの飛行機の進出を待つだけという段階で米軍に奪われ、以後この飛行場奪還のため多くの将兵が投入されることとなり、悲劇が始まった。

数次にわたって投入された将兵に対し、輸送船や駆逐艦等あらゆる手段を尽くして物資の補給が行われたが、待ち受けた米軍の圧倒的な戦力によって阻止され、上陸後1週間と経たないうちに、飢餓と傷病に苦しむようになった。

島の土地は乾燥している時は岩盤のように固いが、いったん雨が降れば泥濘となり、悪魔のように脚にまとわりついて進撃を阻む。

また猖獗きわめる山中にあって将兵は、大人の靴の長さ程もあるムカデや、サソリ等がうごめく野営地から、むせかえるような暑さの中、昼は密林内に潜み、暗夜、うっそうとした灌木をかけ分け、ぬかるんだ山道に何度も足を取られながら、絶望的な戦いを続けた。

また食糧を得るため、補給地点まで後退するものの飢えと渇き、マラリアやデング熱、下痢で弱った体では、その道のりはあまりにも遠く、多くの将兵が途中で力尽きた。

公式記録では、ガ島での戦死者は約2万人であり、そのうち1万5千人以上が飢えとマラリアで亡くなったとされている。

自主派遣隊の中に、実際にガ島での飢餓地獄を体験し生還された、金泉さんという元帰還兵の方がいらっしゃる。派遣隊の顧問であり、95歳という高齢にも関わらず、ほぼ毎年、戦死した戦友への供養のためこの活動に参加され、同島各地で線香を手向けている。

その姿は、故郷を思いながら遠く離れたジャングルで力尽き、そしてまた、必勝を確信しながら散った戦友に、多くの人が大義に尽くす心や、感謝の心を忘れてしまっている現在の日本をどのように感じるか、と問いかけているようであった。

村中先輩は、金泉さんの体験談を直接聞き、またガ島での活動を通じて次のように感じているという。

何不自由の無い戦後に生まれ育った人間が、70年以上前の、日本が取らざるを得なかった結果生じた出来事を、現代の感覚で批判している事に疑問を感じる。実際に悲惨な体験をされ、最も発言できる立場にあるはずの金泉さんや他の帰還兵の方々からも、当時の国家政策、軍の作戦に対する批判、自らが置かれた境遇への恨みは聞かない。

ただ「私等の若い時はそんな時代だった」と言い、「生き残り、こんな結構な時代まで生きてこられたのも死んだ戦友たちのおかげ」と軽くほほえみながら懐古するだけである。

その粛々と運命を受け入れるという考えに、魂の清らかささえ感じる。そしてこの考えこそ、四季折々の美しい自然と風土、歴史の中で日本人が育んできた美意識なのではと。

最後にこの場をお借りして学友の皆様に、わが拓殖大学のみならず他大学を含み、この種の活動に励む学生へのご理解とご支援を、幾重にもお願いいたします。

拓殖大学アフガン会幹事長 丸山聡(92期)

ガ島遺骨収容活動