南極の巻田先生から第4報
こんにちは。
拓殖大学旗と一緒にとった写真を2枚送ります。1枚はブラジル基地(Comandante Ferraz Station)の建物の前で、ブラジル第26次越冬隊長(Sr.Giemio)と一緒にとったものです。彼は海軍のパイロットで南極越冬は初めてであると言うことです。2枚目は基地のあるアドミラルテイ湾をバックにしたもので、海にはブラジル南極観測船が見えます。3枚目はクジラの骨です。ブラジル基地はキングジョージ島という南極半島先端の島のアドミラルテイ湾内にありますが、1820年代頃から英米の捕鯨船がこの湾内でクジラを乱獲し、クジラの解体を行ってきた歴史があります。英国人がクジラ取りのために住んでいた地域に、1983年にブラジル基地が建設されました。昔英国人が住んでいた無人の家も1980年代にあったそうです。また、英国人のお墓も基地内にあります。(1950年代に亡くなったと記された墓標が5本立っています)。
ブラジルの南極観測の状況についてご紹介しておきます。まず、南極隊員はブラジル科学省(CNPq)で認められたProjectのもとに参加しています。輸送や基地の運営は全て海軍が行っており、隊長・医者・コック等は全て軍人です。日本の南極観測に比べると、ブラジル南極観測の主導権は軍が握っているという印象がします。Comandante Ferraz基地と言う名前の由来もFerrazという名前の初代の海軍の基地隊長からとったそうです。研究者はどちらかと言うとお客様という感じです。例えば、夜に行われる会議は隊長が研究者を招集し、各研究者の研究進捗状況について聞き、どのようなサポートを望んでいるのか等を各分野の責任者に聞いています。また、研究者の要望にも良く答えています。隊長は基地運営の主導権と責任を持っており、決して名誉職ではなく実戦部隊という感じです。細かいところにもよく気がつき、率先して、野外作業の指揮から事務処理までやっています。
ところで、夏期間は研究者や作業を行う軍人が滞在しており、総勢50名以上に及び、狭い基地内はごった返しております。他方、1ヶ月ごとに夏隊員の入れ代わりが行われ、 11月から3月末まで5回ぐらい、ブラジルから夏隊員が入れ替わります。従って、一シーズンに2回南極に来る研究者もいます。夏隊と越冬隊の区別はほとんどなく、住居も食事も一緒です。越冬隊員は15名程度で、軍人以外の研究者の越冬は数名ということですが、年によりかなり、ばらつきはあるそうです。
以上、またお便りいたします。
巻田 和男